お祭りびより

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「俺のことを好きな女性(ひと)の気持ちばかりじゃなく、俺自身のことを見てもらえませんか。」 真摯な眼差しで真っ直ぐに見つめてくる。 「俺、真中さんにはチャラ男って言われてるけど、彩木さんのことは中途半端な気持ちじゃないので。」 「・・・。」 ───どうしよう。私なんかのこと、そんな風に・・・。 「そんな顔しないでください。」 衣緒は自分がどんな顔をしているのかわからなかったが、彼は切なそうな顔になってそう言った。 「・・・あの、私今からミーティングなんで・・・今度、ちゃんと話したいです。」 ───言わなくちゃ、ちゃんと。 「わかりました。」 新貝は微笑んだ。衣緒は背中に彼の視線を感じながら複合機コーナーを後にした。 今城から急ぎの仕事の依頼がありギリギリになってしまったがなんとか約束の10分前にオフィスを出ることが出来た。 急いでメイクを直すと1階のロビーに向かう。 鈴太郎はベンチに座って待っていた。 「すみません。お待たせしました。」 ぺこり、と頭を下げる。 「いや、時間はちょうどだけど。やっぱり忙しかった?言ってくれたらよかったのに。」 「大丈夫です。」 「大丈夫ってよく言ってるけど・・・。大丈夫って思う範囲、もう少し狭くした方がいいよ。」 「ごめんなさい。」 ───怒ってる・・・! 「いや、違・・・怒ってる訳じゃない。前も言ったけど・・・自分では気づいてないと思うけど、彩木さんいつも無理しちゃってるから、心配なんだよ。そんなに頑張らなくても、彩木さんがうちのチームに必要なのは変わらない。だから、なんというか、もっと自分を大切に、というか。」 「・・・。」 ───まずい、また泣きそう。 「あ、行くか。予約してる訳じゃないし特に急がないけど。」 ───まずい、また泣かす。 「・・・はい。」 彼女の返事を聞くと鈴太郎は立ち上がって歩きだした。 衣緒は油断したら涙がこぼれそうな状態なので彼と並んで歩くのはためらわれ、後について歩く。 その様子を夕食を買いに外に出ようとしていた新貝が見てしまっていた。
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