プロローグ

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プロローグ

 つつぅっと、頬に何かの液体が流れる感覚で、眠りから覚めた。  目が覚めた途端に、体に異変を感じる。  頭、痛い。それに、体が重くて起き上がれない。……私、何やっていたんだっけ?  恐る恐る目を開ける。 「な、……なにこれ……?」  ーー思わず、絶句した。  何故なら、私の目から顎にかけてが、大量の液体でぐしょぐしょになっていたからだ。私は慌てて飛び起きて、さっきまで自分が体にかけていた毛布を見た。  液体は毛布にもこぼれ落ちており、小さな水たまりが出来ていた。しかも、そこに何か綿のようなものがぷかぷかと浮いている。  一体何が起こっているのか。そう考える間もなく、今この瞬間にも、目から液体が溢れ出してくる。そこで初めて、その水たまりが自分の涙で出来ていることに気が付いた。  私はしばらく呆然としていたが、ふと気がついて時計を見た。まずい、そろそろ出掛けなくては。私は机に置いていた小さな鞄を手に取ると、そこからハンカチを出して目に当てた。そしてその状態のまま、床に置いていた黒いスーツを羽織る。  今夜は高校時代からの親友のお通夜がある。最近も時々一緒に遊びに行ったりもしていたが、突然交通事故で亡くなってしまったのだ。悲しさを紛らわせようと少し昼寝をしていたのだが、寝ている間も涙が止まらなかったのか。そう思うと、改めて胸が締め付けられる思いだった。  だが、いつまでも悲しんでいるわけにも行かない。私は身支度を整えて庭に出ると、ガレージの車に乗り込んだ。しかし、涙はまだ止まっていなかった。
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