仲間

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仲間

「仲間……か」  香坂は、そっと小声で呟いてみた。仰ぎ見る早朝の空は、何時になく高い。  ユニフォームに着替え、グラウンドに出る。  『あの事件』からこっち、部活は『自粛』となっていたが、この日からやっと再開になったのだ。  三年生はもう部活を卒業してグラウンドには来ていない。今は、二年生と一年生だけの新体制である。  何処となく、緊張感が足りない気がする。  いつもと同じようにストレッチと軽いランニングから始まるメニューだが、いまいち『気が入らない』というか。 「おーし、キャッチボール行くぞー!」  先輩から指名されて新キャプテンとなった堂上が明るい声を出しているが。 「……」  他のメンバーからも、威勢のいい掛け声は聴こえてこなかった。  パン……!パン……!  そこ此処で、グラブにボールが収まる小気味の良い音が聞こてくる。  ああ……部活に戻って来たんだな。  香坂はグラブを通して伝わってくるボールの感触に、やっと実感が湧いてきた。  昨日、『ミサキ』と名乗った女性は香坂に「仲間を見つけなさい」と言った。  自分だけで出来る事は限られる。同じ志を持つ仲間を見つける事が出来れば、大きな力として働くだろう……という話だ。  が、しかし。  当然だが『それ』には大きなリスクもある。すなわち『仲間だと思っていたヤツが敵だった』という可能性だ。  もしもそうなればサイアクである。こっちの動きが筒抜けになれば、何をしても先回りされてしまうだろう。だから、人選には慎重を期さなくばなるまい。  仮に、だ。  もしも遠藤先輩の死が単なる『自殺』ではなかったとして。  その死に関係している人間が、部内に存在している可能性を無視は出来ない。では、その最右翼は誰なのか。  実は、真っ先に香坂の頭に浮かぶ候補は『高砂監督』であった。
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