猫は神様、オレ様

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僕が猫のトラに出会ったのはある台風の日だった。かけ出し役者の僕は仕事もバイトもなく、家(安い賃貸一階1LDK)にこもっていた。 すると、外から猫の声が荒れ狂う嵐の音に混じって聞こえてきた。窓の方を見るとずぶ濡れの猫が助けてくれと言わんばかりにこっちを見つめて鳴いていた。 動物不可の賃貸だったけど、台風が過ぎるまでと決めて猫を入れた。入ってきたくせに猫は怖がっているようだったから、とりあえず、小さい容器に水と魚肉ソーセージを置いて放っておいた。 翌朝、猫が鳴きながら窓をカリカリする音で起きた。外の嵐はすっかり収まり、猫は外に出たいようだった。窓を開けると、猫は外にさっと飛び出し走っていった。 その時の僕は気づかなかったが、後からトラに聞いた話では、飛び出していったのはトイレを外ですますためだったらしい。そういう気が利くというか頭の良さがあるトラは憎たらしい時もあるが僕には必要不可欠な存在になっていく。
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