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彼女の泪を指で拭ってあげても止まらない。やっぱり、私はこの子が好きだ。
そう思ってしまうほど、怜央は愛華に救われていた。愛華もまた、怜央に救われていたのかもしれない。
二人の間にできた傷痕は、二人で一緒にまっさらに治していこう。
それを伝える言葉は、この場には必要なかった。
怜央はかつて、愛華を否定した。けれど、今度は違う。自分から受け入れた。愛華の想いを、彼女の愛を、怜央は受け入れた。その証に、怜央は自分から愛華にキスをした。
愛華は泪が引っ込むほどに驚いた。けれど、彼女が自分を受け入れてくれたことが嬉しくて、また温かい涙を流した。愛華もまた、怜央の愛を受け入れた。
怜央の唇は、愛華の唇は、柔らかかった。身も心もとろけてしまいそうなほどだった。
一度唇を離した二人。今度は愛華から怜央にキスをした。そうして何度もキスをして、想いを分かち合った。怜央は、愛華の泪が止まるその時まで、キスを続けた。
ようやく愛華の泪が止まり、二人は愛華のベッドに並んで座った。お互いの指を絡め合って、いわゆる恋人繋ぎをして座っていた。
怜央も愛華も、幸せの絶頂にいた。その一方で、まさか自分が同性に恋をするなんて思わなかったと俯瞰的に驚いていた。
「ねえ、怜央?」と愛華。
「ん?」と怜央。
「ありがと」
愛華が怜央の肩に頭を預けながら照れくさそうに言った。
「私も、ありがと」
怜央も照れくさそうに言った。その後に流れた変な間のせいで二人一緒に笑った。
なんでもない、他所の目から見ればただの友達。親友、の方がしっくりくるのかもしれない。だけど、本当は、違う。
今や二人は、お互いの想いを知り合った恋人同士だった。
伝えることはまだ残っていたけれど、それはまた今度で良いやと思った。
十二月半ばの灰色だらけの空の間から、水分を多く含んだ絵の具のような青空が垣間見えていた。
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