渇水

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快適なはずの隔離生活に 問題が一つあった。 水源がトイレしかないということだ。 呼んでもらえたら来ますよと 優しい笑顔で言ってくれた看護師さんが 呼んでも来ない。 ニトロの病は喉が渇く。 飲んでも飲んでも喉が渇いて 小便が大量に出る。 多飲多尿というのだが、 本人は必死だ。 このまま喉が渇いて息が苦しくなって 死んでしまったらどうしよう。 病室のドアの細い窓には 廊下を行き来する看護師が見える。 二トロは無我夢中で病室のドアを蹴った。 だがいくら蹴っても誰も来なかった。 そこでニトロは貸し与えられていた ジャージのズボンを便器に詰めて、 病室の床がビチョビチョになり 病室の外まで浸水するまで水を流し ベッドの上で待った。
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