一線

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次にデイルームで出会ったのは まだ幼いB子ちゃんとそのお母さんだった。 B子ちゃん 頭の鉢周りが狭くて、 中の脳みそも少なそうな子だった。 軽い気持ちで世間話していたら お母さんが左手の袖をめくって 見せてきた。 そこにはキャベツの千切りみたいに びっしりとリストカットの跡があった。 「そうですよね〜」 ニトロは意味もなくうなずくことしか できなかった。 B子ちゃんとソファに並んで座って テレビを見ていたら 突然B子ちゃんが ニトロの肩に頭をもたれてきた。 「それはダメだよ!」 ニトロは慌ててB子ちゃんを止めた。 それからニトロとB子ちゃん親子とは 埋めがたい距離ができた。 ニトロは今自分がいる場所が どういうところなのか、 少しずつではあるが わかりはじめていた。
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