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「どこか行きますか?」
開口一番でなぜそんな事を言うのか僕は不思議に思った。
「なんでそんなことを聞くんだ?」
彼女はため息をついた。そんな当たり前のことを聞かないでくださいと言いたげな顔で黙っていた。
僕がそれでも彼女を見つめているともう一度ため息を吐いた。
「わかりましたから。そんなに見ないでください。……蒼生さんの『願い事』を叶えるためですよ。人はたくさん欲を持っているんです。命をもらう立場としては心の底から満足して欲しいんですよ。そのためにいろんなきっかけを与えるんですよ。」
彼女はもう話すことはないと言うように下を見ていた。
今の話から僕はいろいろと考えてしまった。きっと彼女はこれまでずっと同じことをしてきたのだろう。何度も、何度も。これから先もずっと。
先程から突き放したような話し方をするのも情を持たないようにするためだろう。他人事だが、悲しくなってきた。それを紛らわすように明るく答える。
「特に何も思いつかないが…。あるとしたら、今からスーパーに買い物に行こうと思っていたぐらいかな。
「今の時間帯ってスーパーは空いてないと思いますよ。」
「そうだな…。昼は混むし、雨が降るから行けないな。近くのコンビニで済ませるよ。」
「私もついて行っていいですか?」「大学生と高校生が一緒にいるところを見られたら不審な目で見られる大丈夫か?」
「私には特に被害はありませんね。」
「僕にはあるけど。まあ早く準備していこうか。」
彼女は大きかく頷いた。
僕はなぜかこの少女の声を聞くたび、笑顔を見るたびに胸にもやもやとしたものが溜まっていく。こんな経験は初めてだ。やがてこれは大きくなり、僕を壊し、彼女までを壊してしまう。なるべく早く手を打たなければならない。
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