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別れの日
優子は、助からなかった。
一夜空けてのお通夜は、クラスメイトの全員が参加した。
一番取り乱していたのは、大峰さやかだった。
さやかが優子と仲の良いイメージは無かったので、少しだけ意外に思った。
受付で記帳をするとき「一人で行ける?」と心配する、母を思い出した。
ちゃんと、出来るよ。
わたしは優子の、親友だもの。
小野寺美月と、自分の名前を書く。どの文字よりも親しみがあるはずなのに……。手の震えが止まらず、綺麗に書けなかった。
親族席に座る、優子のお母さんは、声をかけるのも躊躇うほどに、落ち込んでいた。
(挨拶だけして。今度、お焼香に行こう……)
そう、思っていた。
「美月ちゃん!」
側を通るときに、腕を力強く掴まれる。
「お焼香!必ず、来てね!」
「は、はい」
おばさんの事は、昔から知っているけれど。こんなにも、必死な姿を見るのは、初めてだと思う。
優子は、一人っ子だったから。おばさんは、これからずっと子供の居ない生活を続けるんだ。
そう思うと、急に……。
今まで麻痺していた感情が一気に溢れだし、涙が止まらなかった。
せめて。おばさんの再婚が決まったところで、良かった。
そう自分に言い聞かせて、涙をグッとこらえる。お焼香が終わるとすぐ家に帰った。
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