始まりは、唐突に

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始まりは、唐突に

 クラスの輪が出来はじめる、5月の中旬。朝の学校のグラウンドは、やけに騒がしかった。  なんだろう?それは、ただの好奇心でしかなくて。でも、次の瞬間、わたしは後悔した。  グラウンドに、同じ制服を着た、女子生徒が倒れていたのだ。それは、わたしの……。 「優子!!」  幼馴染みで親友の、城内(きうち)優子(ゆうこ)だった。  すぐに駆け寄りたかったけれど。先生に、止められてしまった。  人ごみの隙間から見える優子は、全く動く気配がなくて。 ……助からないと、理解した。 「優子、優子、どうして……」  本当は。どこかで、わかっていた。優子が、学校に馴染めないことを。  それでも、中学三年生でやっと同じクラスになれて。優子だって、喜んでいると、わたしは思い込んでいた……。  ピーポーピーポー  救急車のサイレンが、(むな)しく響きわたる。  お願い。  優子を……。助けてよ……。  無理だとはわかっていても、諦めきれなかった。
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