君のことは好きじゃなかった

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その日の夜、お風呂に入っていたら、また彼のことを思い出してしまって、声をあげて泣いてしまった。 思い出なんてほとんどないのに、不思議と彼の笑顔や声を何回も思い出すんだ。最後に触れたひんやりとした感触じゃなくて、温かいぬくもりや楽しかったことばかり思い出すよ。 たった二週間だけの付き合いだったのに、どうしてこんなに何回も思い出すんだろう。 ごめんね、君は私を好きだと言ってくれたけど、君のことはまだそんなに好きじゃなかったんだ。 でもね、好きになりたかったよ。 きっと好きになれたと思うよ。 もっと君のことを知りたかった。 もっと君と色んなところに行って、色んな話をしたかった。 ごめんね、こんな気持ちになるのなら、最初から付き合わなければよかったって何度も思ったんだ。でも、何度そう思っても消えてくれないし、なかったことになんてできない。 たった二週間だけだったけど、楽しかったよ。私は幸せだったよ。 君を想って一生一人でいるほどの強い恋心はないし、きっとそのうちまた誰かと付き合うんだと思う。でも、君のことはたぶんずっと忘れられないんだろうな。 家族でもないし、親友でもないし、最愛の恋人でもない。どういう風に悲しんだらいいのかも分からない。君のことは好きじゃなかった。 でもね、今だけは君を想って泣かせてね。 おしまい。
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