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夏華火 -光-
鮮やかに美しく咲く夏の華。
色とりどりの光が夜空を彩る。
「綺麗だなぁ…。」
「うん…。」
二人は輝く空を見上げていた。
「今年も一緒に見れてよかった…。」
「そうだね…。」
瞳を空へ向けたまま呟くように言葉を交わす。
明かりのないテラスで、空の輝きを瞳に映していた。
「…そっちで…うまくやれてる?」
「なんとかね…。毎日色々大変だけど。」
「そっか…無理は…しないでね。」
心配そうな声色に、苦笑いをする。
「大丈夫。まだやらなきゃいけないこと、終わってないし。」
「…うん。頑張って…。」
弾けるような音が鳴り止むと、辺りは静寂に包まれる。
「花火…終わっちゃったね。」
「…あっという間…だったなぁ…。」
光が消えた夜の闇の中、風が肌を撫でていく。
お互いの顔が見えないまま、そっと手を重ねる。
「冷たいな…。」
「仕方がないじゃん…。」
「そろそろ中に入った方がいいかな。」
「うん。」
夏の夜風はひんやりと冷たかった。
「今日、泊まっていかないの?」
「そうはいかないでしょ。また来るよ。」
「気を付けてね。」
「うん。おやすみ。」
「おやすみ。」
一人夜道を歩く後姿を、月の淡い光が優しく包んだ。
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