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「さっきの子、知り合いだったの?」
「宮内鈴さん。私、図書室よく使うから、よく会うの。あの子も本好きだから図書室でよく話もするのよ。」
「なら、あの子に貸し出し頼めばよかったのに。図書委員だし。」
「他クラスの子だし、そんな雑用みたいなこと頼めないわよ。進藤くんは文化祭実行委員だし、仕事だと思って、ね?私が借りられればよかったのだけれど。まさか貸出本数が上限に達しているだなんて思わなかったわ。」
本当は今日、文化祭について何かをする予定はなかった。今日のクラス会議で劇『ロミオとジュリエット』をやることが決まったばかりで、来週に役と台本を決めていく予定だった。教室で帰る準備をしていた僕は磯田さんに呼ばれた。劇のためにもう一度読み直したい、しかし、貸出本数が上限に達していた。そこで僕が図書室で借りるよう頼まれたのだ。ここまでの文化祭の進行を任せきっていることがあって、断るには忍びなかったので引き受けた。磯田さんも悪いからと言って、図書室までは一緒に来てくれることになり、現在に戻る。帰るのは別々というのも変だったので、教室までの廊下も一緒に歩くことになった。
「さっきの話の続きだけど。」
磯田さんは一息おいて、会話をつづけた。
「佐藤さんのことだって嫌いじゃないわ。……好きともいえないけれど。それでも、よく知りもしない相手を嫌いとは言わないわ。知らないってことは、嫌いになる理由にはならないもの。」
行き道に話す内容に困っていたから、たまたまあったいじめ防止のポスターから話を膨らませただけで大した意味のない質問だったから真面目な答えに多少、面を食らった。
「ああ、そう。」
「ええ、そう。」
それから教室に着くまでは何も話さなかった。
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