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大人になった今でも、祖父は嫌いです。
しかし、大人になった今だからこそ分かることがあります。
祖父にも、夢があったのです。
祖父は国鉄を引退してから、絵や書、盆栽に熱中していました。特に絵と書は、地元の展覧会で賞を取るほどの実力でした。
祖父が亡くなった後の遺品整理の際、その練習量に驚かされました。大量の紙袋いっぱいに、失敗した作品や練習に使ったと思われる半紙が詰まっていました。
存命中にそんな話は聞いていませんでしたが、その量は趣味の範疇を超えていたと思います。
それを見て、私は祖父が絵師さんになりたかったのではないか、と思いました。
今の時代よりも、その夢を叶えるのは遥かに難しかったことでしょう。そう思った時、あの小学二年生の出来事が蘇ってきました。
あの時、悔しさをバネに頑張ろうと少しでもしたのか?そう言われて素直に無理だなんて諦めていなかったか?
そう思ったのです。
「プロ野球選手なんて簡単になれるもんじゃない」
そう言われて頑張れなかった自分は、そもそも言われなくても、プロ野球選手にはなれなかったと思います。それくらいで諦める程度のものだったのです。
それに当時は知りませんでしたが、〇〇は野球の強豪でした。そこからプロ野球選手もたくさん出ています。諦めろというより、祖父なりに応援してくれていたのかもしれません。
自分が追えなかった夢を、本気で追って欲しかったのかもしれません。
もう確かめようのないことですが、私はそう思っています。
今では祖父を尊敬しています。でも、もっともっと話したかったのに遠くへ行ってしまった祖父は今でも嫌いです。
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