あなたを嫌いな理由

あなたなんて

　あなたなんて大嫌い。

　人の目を気にして、周りに合わせて。いつもヘラヘラと笑って、何にも気にしてないみたいにして。自分の意見は言わないし、誰かに対して怒ることなんてまずしない。ましてやあなたが泣いている所なんて、一度だって見たことない。まるで喜怒哀楽の最初と最後。いいとこ取りの感情しかないみたいで、見ていてほんとに気味が悪い。

　本当に本当に気味が悪くて、心の底からあなたが嫌いだけれど、私はあなたから離れることはできないの。
だってそれがあなたのすべてではないから。

　人前では泣かないくせに、感動ものに弱いところとか、実は負けず嫌いで、勝負事ではほんとは譲りたくないところとか。情に厚くて、遅刻しそうになってでも困っている人のために尽くせちゃうところとか。ほんと、いつものあなたとは大違いね。
　あ、それから、恋愛面では奥手で、悪い方にしか考えられなくなったりするくせに、変なとこ強気で、大胆なところとかもあったわね。

…いや、これは私の要素だったかしら。

　まぁ、好きにしなさいな。私はあなたにとって、もういらなくなったものなのだから。今のままがいいとあなたが言うから。私は止めたりなんてしないわ。せいぜい空気のまま過ごしてればいいんじゃない。あぁいや、あなたの言葉で言うなら、「穏便に」かしら。

　そろそろ家を出る時間ね…私はしばらく眠るとするわ。あなたが一人になったら、また起こしてちょうだい。そしてしっかり休みなさい。

　なんてったって、「外の私」は疲れるだろうから。