理香の心

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「由加里と理香ちゃんは台所の片付けとゴミの処理を任せていいか?」 「わかった。冷蔵庫の中身も全部持っていくんでしょ」  台所の片隅にはクーラーボックスが三つ置かれていた。 「任せる」  由加里は皿を洗っている。理香はその皿を拭き、食器棚へ戻す。その後は冷蔵庫の中身を出して、次は居間の掃除で、と頭を回らせていた。  数か月、ここには誰も来なくなるんだ。  理香は何回かここに誘われて来た。少し名残リ惜しい。 「貴ちゃんは天然で少しぼうっとしているところがあるけど、よ。よろしくね」  由加里のそんな言い方に理香は弾けるように笑った。由香里にかかると数学の鬼ミーハーも形なしだ。  ミーハーの天然にはかなりうなづけた。人の話を聞かないでぼうっとしている時、まったく関係ない数学式で物事を考えている。さらにとんでもなくとんちんかんなことを言うこともある。  そんなミーハーがってことは理香もよく知っている。  だから理香は元気よく「はいっ」と答えた。 「春になったら今の縛られた関係が変わるのね」と由加里が意味深なことを言う。 「そうですね。私が卒業すればもう教師と教え子の関係じゃなくなりますよね」 「なるほどね。桜が咲く時ってことね」 「はい、桜咲く時には私達も・・・・」  そう桜咲く時、二人は堂々とつきあえるのだ。本物の恋人同士になれる。
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