こーるど さまぁ

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こーるど さまぁ

 夏休みが始まった。令和初の夏休み、16歳になったばかりの少年はどう過ごそうかと考えていた。 令和初と言っても、令和初が頭文字についただけで何処かに遊びに行くだけの夏休みなのは変わらない。 海に行こうか? 山に行こうか? 夏祭りや花火大会で爆買いでもしてやろうか?  所詮は高校生の考える夏休みの予定なぞこんなものである。 それをするにしても先立つものが必要だ。そこで少年は16歳と言う年齢を活かして、アルバイトをすることに決めた。 コンビニエンスストアに無料で置かれたアルバイト情報誌をペラペラと捲るが、近頃はどこも不況なのか最低賃金に毛の生えた時給の求人しか見つからない。 少年は「ハズレ雑誌かよ」と、呟きながらアルバイト情報誌を閉じようとした、すると、安い時給ばかりの求人の中に一つだけ光り輝く時給を持つ求人を発見(みつ)けた。 その求人はステーキのチェーン店のオープニングスタッフの求人であった。時給は最低賃金より遥かに高く、勤務地も自転車で20分、勤務時間も応相談可で学校が始まっても閉店までの数時間だけでもいいとのことで、少年はすぐにその求人に応募した。 初めての求人電話に少年は緊張し辿々しい会話しかできなかったが、少年はなんとか面接の約束をとりつけることに成功した。面接はまだオープン前で工事中のステーキ店の脇に置かれたプレハブ小屋で行われた。 少年の面接を担当したのは新規店舗が起動に乗るまで店を渡り歩くベテランの店長であった。七三分けに眼鏡と言ういかにもと言ったサラリーマン風の体をした店長との面接が始まった。
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