俺の半径1メートル以内に近づくな

5/8
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 一次会でそれなりに飲んでいた純一だが、雅弘に一言もの申そうと景気づけにお酒をあおったため、次第に酔いが回ってくる。 「おい、雅弘。お前なんで俺と一緒の会社に就職したんだよ。」 「就職で最初からこっちに戻るつもりだったんだけど、同級生の柴田から、就職活動の頃、お前の噂聞いたんだよ。純一の第一志望がこの会社だって。僕の志望していた会社の一つだったから、純一と縁があるなあって思って」 「大体、お前がいると、いつだってお前と比較されて、俺の存在価値が低くなるんだよ。お前が転校してきた頃、慣れなくて大変だろうからって声かけたりしてただろ。それなのに、お前のせいで学級委員長もお前の二番手になるし、中学に入ったら成績も俺より上になるし、身長だって俺より高いし、一緒にいたって注目されるのお前ばっかり。」 「ふうん。純一って僕のことそんな風に思っていたんだ……」 「だいたい、中学生の頃から好きだった沙織ちゃんに、勇気を出して告白したら、お前が好きだからってあっさりフラれたんだ。本当に、おまえってヤツは俺の邪魔ばかりしてるのら……だのにろうして……」  お酒のせいで次第に呂律が回らなくなってくる。 「もう……これ以上…近づくな。俺の半径1メートル以内に近づくな……」  言うだけ言って安心したのか、酔っ払って眠り込んでしまった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!