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一学期の終業式が終わり、本格的な夏の太陽が照りつける午後、沢村純一は、校舎裏の片隅に隣のクラスの加藤沙織を呼び出した。中学生の頃から密かに思いを寄せていた彼女に勇気を出して告白するためにーー
「沢村君、今日はどうしたの?」
愛らしい顔立ちの彼女が小首をかしげて尋ねる。純一は勇気を振り絞って言う。
「僕とつきあってください」
しばらくの沈黙の後、彼女が気まずそうな顔をして言う。
「ごめんなさい、私好きな人がいるから」
それまで、うるさかった蝉の声が一瞬止む。
「好きな人って……」
「私、高遠君が好きなの。だからごめんなさい」
そう言って沙織は去って行った。
またアイツなのか。純一は腹立たしくて唇を噛む。
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