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「ごめん、て、聖ぃ…」 龍大は情けない声で、ベッドの上で毛布にくるまったまま背中を向け、完全に拒絶のオーラを出している聖に向かって謝る。 結局、聖の中で外れてしまったゴムは、そこまで深い位置ではなく指で掻き出せるところではあったのだけれども、その中にたっぷり吐き出されていた龍大の精液をも胎内にぶちまける羽目になってしまい。 お腹痛くなんのヤだろ?と説得され、洗うという名目で、浴室で散々龍大にお尻を弄り回されて喘がされた挙げ句に二回戦に突入し、洗ったはずのナカに結局中出しされて、文頭に戻る…みたいなループになりかけたのを、三回戦に至る前に、自分で洗うから出てけっ!と聖が涙目で叫んだことで、なんとか事件は終息はしたのだが。 一回目が早すぎてしまったという反省もあり、ついでに浴室プレイという状況にコーフンしまくった二回戦だったので、そもそも浴室に来ることになった理由をすっかり忘れて調子に乗って、かなりしつこく聖を弄りまくって散々恥ずかしい格好をさせて達かせまくったのがよくなかったのか、浴室から出てきた聖の機嫌は最悪で。 ジロリと龍大を一瞥すると、氷のように冷ややかな表情のまま、プイと顔を背けて無言で毛布にくるまり、現状に至るのだ。 それでも、帰る、と言い出さないだけ、まだいいほうなのかもしれない。 六年という月日をかけて、やっと結ばれたというのに、怒らせた上に帰られたら本気で泣いてしまいそうだ。 「聖ぃ」 くるまった毛布からはみ出ている、そのくせっ毛を恐る恐る撫でる。 ギロリ、と聖の睨みが返ってくる。 鼻から下は毛布にくるまっているから、モゴモゴとした呟きはくぐもっていて聞き取りにくい。 「……エアコン、寒い」 自然と耳を寄せるようにして聞き取ったのは、そんな言葉。 「えっ?あっ、設定温度上げる?」 浴室で裸のまま長時間いたから、風邪でもひかせてしまったか、とオロオロしながら龍大はエアコンのリモコンを探すが、どーいうわけか見つからない。 「もっ、毛布もう一枚出そうか?」 熱でも出てきた?と、額に手を当てようとした、その手首を掴まれた。 「お前が風除けになればいんだよ」 ぐい、と引かれて、聖の隣に倒れ込むように横になる。 その毛布でぐるぐるになった塊を、エアコンの風から庇うように抱き込むと。 バカタツ、と小さく罵られた。 お前はケーケンホーフかもしんねえけど、俺は初心者なんだよ。 いくら抱かれる覚悟決めたからって、最初っから、あんなの、ハードル高ぇっつの。 ニブイ龍大にも、さすがにそれが、浴室での諸々を指しているのだ、とはすぐにわかった。 怒っているのではなく、物凄く照れているのかもしれない。 そう思ったら、顔の筋肉がだらしなく緩んでくるのを感じた。 腕の中の毛布の塊を、キュッと抱き締める。 と、そのくせっ毛の隙間から、毛布の中に変なものが覗いているのを見つけてしまった。 見間違いでなければ、それはエアコンのリモコンだ。 寒いって、そーゆーこと? 抱き締めて貰うのに、風除けなんて理由が欲しくて、このくそ可愛い巣の中にリモコン隠してたワケ? なんだもう、この可愛すぎるイキモノは。 股間が反応してしまいそうになるのを堪えるのに苦労しつつ、龍大は、さすがにそのリモコンを見なかったことにするぐらいのスマートさは持ち合わせていた。 「ん、ごめん、聖」 聖の前だと、俺、スゲェ余裕無くなんの。 ドーテーみてぇに、ガッツいて焦って欲しがって。 「無理させて、ごめん」 毛布ごと、もう一度ぎゅっと強めに抱き締める。 聖のふわふわのくせっ毛が鼻に当たるから、その髪に鼻を埋めた。 モゴモゴ、と毛布の中の聖が小さな声で何か言う。 「…罰として、俺が寒くなんねぇように、一晩中そうしてろ」 そんな理由つけなくたって、いつだってこうして抱き締めて眠るのに。 そもそもそれ、全然罰じゃねぇし。 むしろ、ご褒美? 「わかった…朝までこうしてるから、許してくれる?」 しょーがねぇな、許してやる、という、どこか満足げな呟きは、密やかな甘みを帯びて、小さな欠伸とともに毛布の中に吸い込まれていったのだった。
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