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笑いながら涙を流すみのり。
笑いながら泣くなよ、器用なヤツだな。
また、俺が泣かせたじゃねーか。
堪らなくなった俺は、みのりをぎゅっと強く抱きしめた。そして俺は、その温もりに安堵して深いため息を吐いた。
「瑛太、会いたかった!ずっと会いたくてね、後悔してた…ごめんね、瑛太のこと疑って。」
あぁ、こいつは…、
やっぱり真っ直ぐなヤツだな。
会うなり謝るなよ。謝るのは、俺の方なんだから。
「謝んなくていい、不安にさせたのは俺だろ?
謝るのは俺だよ。」
みのりが泣きながら、首を左右に振る。
「だって、私が弱いから。」
「弱くてもいい、でも弱くなんかねーし。」
「私、自分が瑛太に相応しいかどうかなんて考えたことなかったの。
あの人に言われて、ショックだった。」
「あの人って!誰かに何か言われたのか?」
「うん、澤野さんが会社の近くで待ってた。
瑛太と一緒に出張に行ったこととか…
それで、瑛太とつき合うから私に別れて欲しいって。
でも、勝手な人だし、腹が立ってね。
帰ろうと思ったら、あの人に、
瑛太に私は相応しくないって言われて…。
実は私、その前に瑛太がアメリカから予定より早く帰って来て、澤野さんと密会してるとこ見てたんだよ。」
「待て、言っとくけど、密会じゃねーから。
あの女、そんなこと言いやがったか!」
みのりを悲しませたこと、悲しみから守ってやれなかったこと。
その事実と、そんな自分に腹が立って悔しくて、俺は歯ぎしりをする思いだった。
そして初めて、怒りの余りに体が震えるという感覚を味わった。
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