燦々と

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 それから、誤解がないように。 「出張だって、2人じゃないぞ! 部長と3人だったのに、どうせ思わせぶりな言い方をしたんだろ? 俺はあんな厚化粧女、大嫌いだからな。 アホな親父が甘やかし過ぎたんだろうな。 それに俺は、あいつらなんかの世話になる必要の無い仕事をしてるから、みのりは何も心配しなくいい。  後ひとつ、隠し事には理由がある。 最初から内緒にしなけりゃ、こんな厄介なことにならなかったんだろうけどな。 1日早く帰ったのは、和幸おじさんと冴子さんに、みのりへの気持ちを伝えに行く為だった。 澤野に足止めされて、遅くなったけど会いに行ったんだよ、俺。 みのりは、一人娘だから婿養子を取るって言われたら、俺は平岡姓になるつもりだった。 でも、そんな必要は無いって和幸おじさんに言われたけど。 まだ、みのりにプロポーズする前だったから、 全部、内緒にしておきたかった。 その後すぐに、プロポーズしたかったのに タイミング逃したな、俺。 結果的に内緒にしてた事が、嘘つきになった理由なんだ。 ごめんな、泣かせて。」 「瑛太、なんだか夢みたい。」 だって、瑛太がそっと私の手をとり、 左手の薬指に、光り輝く永遠の証をそっとはめてくれた。 「夢じゃない、ずっと一緒にいよう。 俺と結婚しよう!幸せにする自信はある。 返事は、「はい」だ! それ以外は、受けつけない。」 「はい、よろしくお願いします。」 涙が、静かに溢れ落ちた。 悲しい涙なんかじゃない、嬉しい涙。 「瑛太?」 「ん?」 「なんか、き、気持ち悪い〜」 「みのり、待て!吐きそうなのか?」 みのりは俺を押し退けて、トイレに走った。 その夜 俺は、みのりの背中をさすって介抱し、 そして、みのりをベッドで抱きしめて、 純粋に、純粋に眠った。 冴子さんの期待に反して… そういう意味では、何もなかった。 それでも、幸せで忘れられない夜になったよ。 翌朝の俺が、みのりの穏やかな寝顔と、そして左手に輝く指輪を見て、最高の幸せを噛み締めていたのは言うまでもない。
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