あなたがいてくれたら

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 看護師さんが入室し、 「平岡さーん、目が覚めましたねー」 と、父にわかるように、大きな声でゆっくりと話しかける。 「ここ、どこかわかるー?まだ、ぼんやりしてるかなー?」 看護師さんは、優しく和かに話し続ける。 「ここは、病院です、わかりますか?平岡さーん、お話しは出来ますかー?」 そこで父は、 「は、い…、」 かすれた声で返事をした。 「お名前は?わかりますかー?言える? なー、まー、えー、自分の。」 「・・・ひ、ら、おか、か、ず、ゆき」 看護師さんはにっこりして、うんうんと頷いた。 そして、母の目から安堵の涙が溢れた。 「はーい、それじゃすぐに先生が来られると思いますから、もう少しお待ちくださいね。」  その後、医師の診察を受け、その後の脳の様子を見た限り新たな出血は見られないが、また明日も同じ検査をするということだった。 絶対だとは言えないが、この分だと大きな後遺症は無いのではないかと、担当医の所見は私達の想像以上にに明るいものだった。  母と私は、父の今後に希望を持てたことが嬉しくて、病室の中はたちまち明るい雰囲気が漂うようになった。 午後になると父の意識もはっきりしてきて、 会話も徐々にできるようになっていた。
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