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午後の病室は静かで和やかだった。
幾分、目に生気が戻った父が
「心配かけたなぁ」と母に言う。
「本当に。
必死に平静を保ってたけど、私…
びっくりしちゃって、一瞬もう…ダメかと思っちゃって…。」
また涙ぐむ。
母が泣き虫だったと初めて知ったけど、これは父のことを心配する余りなんだろうな。
「みのり、瑛太くんも、ありがとう。」
まだ父の声にそれほど力はないが、思った以上にしっかりとした口調だった。
その後、私は課長に電話をして月曜日には出社できそうですと連絡した。
「良かったー、心配してたんだよ。
くれぐれも看病疲れしないように気をつけて。
お母さんにも、宜しくお伝えください。」
と優しい言葉をいただいた。
病室で瑛太に、母は暫くこっちに滞在することになると伝え、私はもう1日泊まるから瑛太に先に帰るように言った。
「土日だし、俺も明日でいいよ。
どこか泊まるとこを探すから。
みのりもおばさんも寝てないだろ?」
「お父さんの借りてるマンションが割と近いから、そこに泊まろうと思ってる。」
と言うと。
お母さんが、
「それじゃ瑛ちゃんも一緒に泊まりなさいよ。
お父さんの部屋広くて良い部屋よ。
私もしょっちゅう泊まりに来てるし、
私も後から行くから。ねっ!」
母、何を言うんだ!
私も瑛太も一瞬、固まった。
でも、お母さんも来るのならいいかな?
妙に意識していると思われたくなくて、
「そうする?」
「じやあ、そうする」
と瑛太も同意してしまった。
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