二人の距離は?

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二人の距離は?

 その日は一旦父のマンションに行き、シャワーをして仮眠をとることにした。 同じ部屋に瑛太が居るのに、シャワーするなんて!と、無意味にドキドキした。 意識し過ぎだな…。 対して瑛太は、いたって普通。 シャワー後の瑛太は今日も、濡れ髪がセクシー過ぎて、クラクラしちゃいそう。 しかも上半身、裸って⁉︎ あぁ〜落ち着かない! 「早く上、着て!」 「はいはい」 瑛太はニタニタ笑いながらTシャツを着た。 しかし、ただの白Tなのに…、 セクシーとか? 恐るべき男だな。 逞しい大胸筋や太い腕の筋肉が強調されて、まだまだ落ち着かない! 明らかに私とは違う。 大人の男だ。 こんな男くさい人、他に会ったことない。 なんて思いつつ、 なんとか気持ちを落ち着かせて、買ってきたお弁当を一緒に食べた。 小さい頃の話しとか、お互いの家族の話しをした。 瑛太の弟の康太は3つ下で社会人一年生で、他県で修行中。 立花夫妻も、平岡家に負けないぐらいの円満ぶりだと思う。 お互いの両親の話しをした後、ふいに瑛太が、 「夫婦って、いいもんだな」 ポツリと言った。 「そうだね、いいもんだね。」と答えた。 にっこりと笑った瑛太の顔を見て、私もつられて笑った。 「冴子さん、当分の間こっちにいるんだろう? そしたら、お前どうすんの?」 「うーん、私のアパートに帰る? いや、実家が無人になるねー、 どうしようかな? まぁ、お父さんの入院期間がどれぐらいになるか、まだ分からないからなぁ〜」 「もう、アパート解約すれば?」 「実家に帰れってこと?」 瑛太が頷いた。 「そう言えば! 火曜日、エアコンの取り付け工事だったわ。 明日、家電屋さんから確認の電話がある予定なんだけど、どうしようかなぁ? 取り付け日時、変更してもらおうかな?」 「解約するんだから、 エアコン要らねーだろ?」 えっ、引っ越し決定なの? 「電話してキャンセルしとけ」 いやいや、まだ決めらんない! 「お母さんに相談しなきゃ!」 「お前、いくつだ?自分で決めろ!」 あんたと同い年だよ! もう、勝手なんだから。 どうする?私。 ふと気づいたことがある。 昨夜はあんなに泣いたり、落ち込んだりしてたのに、 お父さんの病状が落ち着いた所為もあるけど、 瑛太と、こうしてやり取りしてると嫌なこと 忘れてるんだよね。 ただ、二人の間に甘さは無いけど…。
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