5484人が本棚に入れています
本棚に追加
その後なんとか平常運転に戻った私は、父の容態を母に聞いた。
母の話しでは、父は容態もだいぶ落ち着き、手足の感覚も有るそうで、少し手足を動かしてみたが今のところ麻痺は見受けられなかった。
もうしばらく安静にして、様子を見ることになったということだ。
やはり素早い処置が幸運だった。
一人でこの部屋で倒れていたらと、考えるとゾッとした。
ひとまず安心。
昨日からでいちばん嬉しい言葉だ。
ひと息つこうと、お父さんの冷蔵庫にあった冷たいルイボスティーをいれた。
私の真横にいる瑛太が、ひと口飲んで「まずっ!」と言いながらグラスを睨みつけていた。
母は涼しい顔をして、
「そう?おいしいわよ?飲み慣れたら平気よ〜、私が和幸に飲むように薦めたの。胃腸や高血圧、美容にも良いのよ〜」
と笑っている。
「こうやって体に気をつけていても、病気になる時にはなるんだよね。」
「そうね、特にひとり暮らしって大変よ、食事の栄養バランスとかもね。」
と、母が苦笑いした。
そこで瑛太が
「冴子さんは、しばらくはこっちに?」
「うん、落ち着くまではって思ったんだけど、
検査の結果次第でどうするか考えるつもりでいたの。でも、こうなってみて…やっぱり側にいてあげなきゃって思ったのよね。
ずっと離れてても、お互いに仕事も頑張ってきたし理解もあった。だけど今回、もし彼がいなくなったら?って考えたら怖くなったわ。
こんなんで永遠にお別れとか、ぞっとする。
もっと一緒にいなきゃ後悔するって、一緒にいたいって思ったの。」
一呼吸置いて、母か言った。
「だから、お母さん仕事辞めるわ!」
私も瑛太も驚いて、母の顔をまじまじと見つめた。
最初のコメントを投稿しよう!