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私が幼い頃から、ずっと第一線で働いてきた母。多忙な母に甘えたくて、寂しい思いをした事もあったけど…、私は両親の愛情に包まれて育ったと、自信を持って言える。
管理職になった今、母を慕う部下も多い。
時には自宅に部下を呼んで、手料理を振るまう事もあった。
一緒に料理を手伝ったりしながら、こんなに部下からも慕われて…。
お母さんはすごいなぁって思ってた。
自慢だったな。
今、そんな母が退職するという、最愛の父の為に。
「お母さん、後悔しない?」
「うん、しない。私は、今辞めない方が後悔すると思うのよ、きっとね。」
「わかった、私は反対しない。
私、お母さんもお父さんも大好きだから。ふたりが幸せなら、それが一番だよ。」
瑛太も黙って聞いていたが、
「俺も、ふたりは一緒にいた方がいいと思う。」
そう言って私を見た後、
「この際、みのりも実家に帰るって言ってる。」
「いや、まっ・・・」
「えっ、そうなの?大丈夫なの?
そうしてくれると、お母さんも嬉しいわ!
当分の間は、こっちにいることになると思うんだけど、家の事も気になってるの。
みのりは家でひとりになっちゃうけど、大丈夫?」
期待を込めて私を見ている母に、ノーとは言えない。
「う、うん・・・」
「無理してない?」
「大丈夫だよ、ひとり暮らしは慣れてる。」
「ありがとう、お父さんに早く元気になってもらわなくちゃね。」
と母が笑った。
そうだね。
こんな時こそ、みんなで力を合わせなくちゃと、心の中で思った。
エアコンはキャンセルだな。
何故だか、瑛太まで満足そうに笑っていた。
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