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その後、仮眠している母と交代で、瑛太と私は父の病室に向かった。
「お父さん、お母さんと交代で来たよ。
ごめんねー、お母さんじゃなくてー。」
と不貞腐れたフリをして言った。
ふふふって、笑ってる。
「会えて嬉しいよ、みのり。来てくれてありがとう。」
そして、
「死ぬとこだった」とポツリと父が呟いた。
ふいに目頭が熱くなって、胸が締めつけられるようだった。
本当に父を失ってたかもしれないんだ。
まだまだ親孝行してないのに、全然、何にもできてない。今まで自分の事しか考えてなかった。両親がいつまでも元気で、当たり前だと思っていた。
「孫の顔を見るまで、死なないんじゃなかった?」
「そうだったさ、だから死ななかったんだ。」
そして父は、私の顔と瑛太の顔を交互に見てから言った。
「そろそろ孫の顔、見せてくれるのか?」
「は?ないない!孫なんかないよ。それに死なれたら困るもん。」
「そうか、残念だな。できるだけ早くにな、見せてくれたら嬉しいよ。」
そう言いながら父は、穏やかな笑みを浮かべていた。
そして、私は心の中で呟いた。
お父さん、私にも大切な人がいます。
離れていた距離が、あなたのおかげで少し縮まりました。
孫なんて、とても考えられないけれど…。
今度こそ、恋を頑張ってみようと思います。
だから、一日も早く元気になってください。
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