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瑛太の想い
こいつ、平岡みのりは俺の幼馴染みだ。
ずっと側にいて、いちばん近くで…
小さい頃から大切にしてきたつもりだ。
おとなしいのかと思ったら大胆だったり、それでいて優しさも忘れていない、とにかく可愛いヤツだった。
見た目も勿論、可愛い。
あの麗しい夫婦の娘なんだから、当然だな。
キラキラした目をして、いつも俺の後をついて来た。俺の大切な宝物だったんだ。
それが当たり前だった、中学まではな…。
それが高校進学の時、俺がバスケで強豪の男子校に行ったばっかりに。
ちょっと目を離した隙に、他の奴に持って行かれた。
あの時の悔しさは、俺にとって忘れられない苦い記憶だ。みのりは俺のことなんて、何とも思ってないみたいだったが…。
それから暫くはバスケに集中したけど、時折みのりから寄せられる恋の相談に、俺は悶絶しそうだった。
こっちはバスケが恋人状態の男子高校生なのにな。
あいつは、俺をタダの幼馴染みだとしか思えないんだろう。それが俺の立ち位置なんだと自覚した。それでも大切な存在に変わりはなく、
自分の気持ちに蓋をして、仲良しの幼馴染みを演じ続けた。
そして、大学になってもそれは続いた。
そのうち俺はみのりを想いながらも、報われない想いに耐えきれず、そのやるせない想いを何度も断ち切ろうとした。
やがて、他の女と短いつき合いを繰り返すようになり、その頃にはみのりと会うことも殆ど無かった。
周囲の心配をよそに、俺はただなんとなく毎日を過ごし、自堕落とも言える学生生活を送っていた。
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