瑛太の想い

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 就職も決まったある日。 親父から聞いたのか、アメリカ行きを承諾すべきかどうか悩む俺に、みのりの父親の和幸おじさんが言った。 『一度、ここ《日本》を離れて冷静になれ、 自分を見失うな。 アメリカで自分を磨いて、大きくなって帰って来い! そこからが瑛太くんの本当のスタートだ。』 と背中を押してくれた。 俺は冷水を浴びせられたように、 今までの自分自身の不甲斐なさに気づいた。 大事なものから目を背けて、大切な人たちを失望させてばかりの毎日だった。 俺は和幸おじさんに誓った。 『俺の本当にやるべき事、本当に大切なものを見つけたら、日本に帰って来ます。』と。  俺はアメリカで必死に頑張った。 バカにされても諦めたら終わりだと思い、寝る間を惜しんで本を読み、語学を学び、見聞を広める努力をした。 やれる事は全部やった。 結果、アメリカ本社で実績を残せた俺は、日本支社で経営に携わる部署へ配属される辞令を受けた。 やっと日本に帰って来たんだ。 今なら、みのりを幸せにできる自信は十分にある。仕事だってアメリカだろうが日本だろうが、同期の誰よりも結果を残せるはずだという自負はある。 もう、あの頃の思いは繰り返したくない。 俺は必ず、みのりを俺のものにする。しかし、あいつは鈍いから心配だ。  あの頃の可愛かったみのりは、今や母親を凌ぐぐらいに美しい女性になっていた。 つい見とれてしまうことも、度々あった。 無自覚に人を煽って、翻弄してしまうところもタチが悪い。 あの課長も、きっと狙ってるに違いない。 どれだけライバルがいるのか知らないが、これ以上のんびりしてはいられない。 俺は心に決めた。
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