幸せな時間

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幸せな時間

 瑛太と合流してから、私は母に電話をして父の様子を聞いた。 順調に回復しているということだった。 握力が少し弱かったらしいけど、父は今後のリハビリで頑張るんだと、前向きな様子でヤル気満々らしい。 それを聞いた私は、ホッと胸を撫で下ろした。 「お母さんも無理しないでね、くれぐれも体に気をつけてね。」 そう言って電話を切った後、私は会社の近くのスーパーに行くことにした。 「瑛太は車で待ってる?」 「いや、行くよ。荷物を持つ約束だったろ?」 「ありがとう。」 嬉し過ぎる、ますます新婚さんみたいだ。 スーパーに入ると、瑛太がショッピングカートを押して、私が食材をポイポイと入れていく。 「ねぇ、朝はパンとご飯どっちがいい?」 「俺は白飯派だな。 パンはすぐに腹が減る気がするんだよな。」 それじゃ、鮭と納豆と、たまごと…。 ちらりと瑛太を見ると嫌な顔をしている。 ふふっ、瑛太は納豆が大嫌いなんだよね〜、 知ってるけどね。 「俺の前で、納豆食うなよ。」 「えー、美味しいよ。食わず嫌いは直しなさいよ〜。」 「食わねー、匂いがダメだ!」 「もう、大人のくせに。」 まぁ、納豆嫌いの人には無理かな?瑛太にも苦手なものがあるんだね〜。 こんなやりとりでさえ心が弾んだ。  その後もふたりで、ああだこうだ言いながら買い物を続けた。そうしているうちに、買い物カゴはいっぱいになった。 一人分にしては多すぎる量だけど、瑛太も食べそうだし余ったら冷凍しておこう。  ふたりだと買い物も楽しいな。 重い買い物袋は、瑛太が軽々と運んでくれた。 そう言えば高校生の頃、こういうシチュエーションに憧れてたんだよね。 ただ、瑛太を見る周囲の女性の視線は、気になるんだよなぁ。 まぁ、見ちゃう気持ちも分かるんだけど。 緩めたネクタイがまた、セクシーだわ…
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