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瑛太の憂鬱
みのりがいない毎日は、つまらねー。
やっと捕まえたと思ったら、あっという間にすり抜けて行こうとする。
早く取り戻さなけりゃ、ヤバイことになる。
しかし、今の俺には時間が足りない。
澤野京香に油断した罰だな。
ビシッと言ったつもりが、あの女のプライドを傷つけたらしいな。
あの女は、俺と関係を持ったと吹聴している、
しかも、あろうことか自分の父親にもだ。
社内でも噂になったいるようだ。
バカバカしい、何か勘違いしていないか?
常務である父親を頼って、俺を思い通りに動かそうと思っているなら、頭が悪りぃな。
言っておくが、俺は支社に配属されてはいるが、支社の社員じゃない。
あくまで、アメリカ本社採用の社員だ。
もうひとつ言えば、本社所属の幹部候補で、日本支社の改善点をアメリカに報告するのが、俺の本当の仕事。
澤野京香、無能な父親共々、この社内から消す事も不可能ではない。
なぜ俺がアメリカ本社採用になったのか。
俺にはアメリカに留学経験がある。その時、事故に遭遇し人命救助をしたことがあったんだ。偶然にも、助けたのは我が社のCEOの息子で、今では親友のアレックス・ハーディングだ。
何度も礼をしたいと言われたが、固辞してきた。
アレックスは、アメリカに知人の少なかった俺と友人となり、彼の父親とも懇意にしていて、親子で俺を気に入ってくれていたのは確かだ。しかし、父親の職業までは知らなかった。
日本支社の入社試験を受けたのに、アメリカ本社に採用された俺は、最初は何かの間違いだと思った。その裏にアレックス親子がいたなんて、驚きだった。
「エイタ、アメリカに来い。
俺の片腕として、世界を相手にビジネスをやろう。」
魅力的な言葉で、俺を誘ってくれた。そして、将来は日本支社を任せられる男になれと…。
そういった経緯で今の俺があるんだ。
俺を甘く見てもらっては困る。そして、澤野京香、俺の邪魔はさせないぜ。
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