自覚

1/10
5479人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ

自覚

 家に帰って、すぐに美咲に電話した。 「早速、電話で報告なんて!盛り上がってるね〜。」 「別に、全然盛り上がってなんかないけど〜」 「美咲でしょ?盛り上がってるのは。」 「まぁ、こっちはほどほどに、 それより、瑛太くん?どう?どう?どんな感じ?早くアプローチしてつき合っちゃいなよ〜」 「簡単に言わないでよ〜! 瑛太は全然そんな気ないよ、たぶん。」 「でも、今日一日ホント楽しかった〜。 やっぱり瑛太のこと好きなのかな? ちょっとだけ、意識しちゃったかも…。」 「今さら? そんなの最初から知ってるよ〜。 みのりは瑛太くんがいるから、他の人と続かないの。自分で分かってなかったの?ちょっと鈍すぎ〜。」 美咲の言葉にギクリとした。 「向こうは、ただの幼馴染みとしか思ってないよ、家族みたいなもんだって言ってた…。」  自分では、瑛太のことなんか忘れたと思ってたけど、本当は忘れるはずなんかない、忘れられるはずがない。 だって、この街もこの家も瑛太との思い出でいっぱいだ。 子どもの頃のアルバムは、瑛太と私の笑顔で埋め尽くされている。 私の思い出は、ぜんぶ瑛太で溢れかえっているんだから。  ガラス細工のうさぎを指先で撫でながら、 複雑な気持ちを抱えた私は、大きな溜め息を吐いた。 昨夜眠れなかった所為か、急に眠気がやってきた。 眠りに陥ちる寸前に、 優しく笑う瑛太の顔が浮かんだ。 夢でも逢いたい、瑛太に… おやすみ、瑛太。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!