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自覚
家に帰って、すぐに美咲に電話した。
「早速、電話で報告なんて!盛り上がってるね〜。」
「別に、全然盛り上がってなんかないけど〜」
「美咲でしょ?盛り上がってるのは。」
「まぁ、こっちはほどほどに、
それより、瑛太くん?どう?どう?どんな感じ?早くアプローチしてつき合っちゃいなよ〜」
「簡単に言わないでよ〜!
瑛太は全然そんな気ないよ、たぶん。」
「でも、今日一日ホント楽しかった〜。
やっぱり瑛太のこと好きなのかな?
ちょっとだけ、意識しちゃったかも…。」
「今さら? そんなの最初から知ってるよ〜。
みのりは瑛太くんがいるから、他の人と続かないの。自分で分かってなかったの?ちょっと鈍すぎ〜。」
美咲の言葉にギクリとした。
「向こうは、ただの幼馴染みとしか思ってないよ、家族みたいなもんだって言ってた…。」
自分では、瑛太のことなんか忘れたと思ってたけど、本当は忘れるはずなんかない、忘れられるはずがない。
だって、この街もこの家も瑛太との思い出でいっぱいだ。
子どもの頃のアルバムは、瑛太と私の笑顔で埋め尽くされている。
私の思い出は、ぜんぶ瑛太で溢れかえっているんだから。
ガラス細工のうさぎを指先で撫でながら、
複雑な気持ちを抱えた私は、大きな溜め息を吐いた。
昨夜眠れなかった所為か、急に眠気がやってきた。
眠りに陥ちる寸前に、
優しく笑う瑛太の顔が浮かんだ。
夢でも逢いたい、瑛太に…
おやすみ、瑛太。
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