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あなたがいてくれたら
自宅に到着すると課長が言った。
「気をつけて行くんだよ、連絡を待ってる。
数日休んでも構わないから、遠慮なく電話してくれたらいい。」
課長に礼を言って、私は急いで車を降りた。
課長を見送るのもそこそこに家の中へ入ろうとしたが、ふと立ち止まり隣家のガレージを確認した。
瑛太、まだ帰ってないよね?
無性に瑛太に会いたい!会って大丈夫だって、
お父さんは心配無いって言って欲しかった。
瑛太の笑顔が見たい。
涙が溢れそうになったが、私はそれを必死に押し留めた。
家に入ると、母は既に荷作りを済ませていた。
「みのり、あなたも早く準備しないと。」
母の顔を見たら、鼻の奥がツンとした。
「うん、急いで準備する。」
その声は微かに震えていた。
何を詰めたのかよく覚えていない荷物を持ってリビングに戻ると、母が誰かと電話をしていた。
「ええ、こっちは準備できたわ。
都合でしばらく留守にするかもしれないけど、お願いします。
ゴメンなさいね、迷惑かけて。
うん、
うん、
ありがとう。」
母の声も震えている。
「瑛ちゃんが、今帰ってきたから送ってくれるって!
加代子さんが心配してくれてね、直人おじさんは出張で留守だから、瑛ちゃんに連絡取ってくれたらしいの。
本当にありがたいね…。
加代子さんも直人さんも、お父さんのこと心配してくれてっ……うっ… 」
母が泣いている。
どんな時も明るくて元気で太陽みたいな、
気丈な母が…、肩を震わせて泣いている。
お父さん、ダメじゃない!
愛妻、泣かせたらダメでしょう?
会ったら、いつもみたいに元気に笑ってよね。
だから、お父さん…
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