瑛太の憂鬱

1/1
5481人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ

瑛太の憂鬱

 みのりがいない毎日は、つまらねー。 やっと捕まえたと思ったら、あっという間にすり抜けて行こうとする。 早く取り戻さなけりゃ、ヤバイことになる。 しかし、今の俺には時間が足りない。 澤野京香に油断した罰だな。 ビシッと言ったつもりが、あの女のプライドを傷つけたらしいな。 あの女は、俺と関係を持ったと吹聴している、 しかも、あろうことか自分の父親にもだ。 社内でも噂になったいるようだ。 バカバカしい、何か勘違いしていないか? 常務である父親を頼って、俺を思い通りに動かそうと思っているなら、頭が悪りぃな。  言っておくが、俺は支社に配属されてはいるが、支社の社員じゃない。 あくまで、アメリカ本社採用の社員だ。 もうひとつ言えば、本社所属の幹部候補で、日本支社の改善点をアメリカに報告するのが、俺の本当の仕事。 澤野京香、無能な父親共々、この社内から消す事も不可能ではない。  なぜ俺がアメリカ本社採用になったのか。 俺にはアメリカに留学経験がある。その時、事故に遭遇し人命救助をしたことがあったんだ。偶然にも、助けたのは我が社のCEOの息子で、今では親友のアレックス・ハーディングだ。 何度も礼をしたいと言われたが、固辞してきた。  アレックスは、アメリカに知人の少なかった俺と友人となり、彼の父親とも懇意にしていて、親子で俺を気に入ってくれていたのは確かだ。しかし、父親の職業までは知らなかった。  日本支社の入社試験を受けたのに、アメリカ本社に採用された俺は、最初は何かの間違いだと思った。その裏にアレックス親子がいたなんて、驚きだった。 「エイタ、アメリカに来い。 俺の片腕として、世界を相手にビジネスをやろう。」 魅力的な言葉で、俺を誘ってくれた。そして、将来は日本支社を任せられる男になれと…。 そういった経緯で今の俺があるんだ。 俺を甘く見てもらっては困る。そして、澤野京香、俺の邪魔はさせないぜ。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!