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死の訪問者
居酒屋を出ると、おっちゃんはあっという間に人混みに消えてしまった。
けっこう自己中なキャラのようだ。不気味な話を聞かされたのに、どこか憎めない。
僕は家に戻った。
電気がついていないので、家全体が黒い影法師のように浮いている。
玄関を開け、外灯のスイッチをオンにして、そのあとは家じゅうの電気つけまくって明るくした。そうしないと、さすがにやはり怖い。伽藍堂のような家に一人で夜を過ごすのは不本意だが、「幽霊を見たので帰りたいよお」と両親に甘えるわけにもいかなかった。しかもまだ初日。まだ始まったばかりなのだ。
女子アイドルグループの歌を口ずさみながら、ダイニングのテレビの音量を上げた。
僕はじいちゃんの部屋に放置してあったキャリーケースとスクールリュックを和室客間へ運んだ。
キャリーケースを開けて、明日着ていく衣類とパジャマ、アメニティーグッズを並べ、次に押し入れから客用の布団を敷いて終了だった。
バスルームで熱いシャワーを浴びているうちに頭も身体もすっきりしてきた。
たった一日のあいだにいろんなことが起きてしまった。
この調子だともっとヤバいことに見舞われかねない。
助っ人が必要だった。
学校のクラスメートでこういった類のことに長けている奴はいたかな・・・
鎌田、安崎、鈴木、天里、成島、河口・・・顔と性格が浮かんでは消去されていく。アイドルオタクにアニメオタク、バスケの選手、国立大を目指している秀才。河口は写真部だけど鉄道と女の子ばかり撮ってるしなあ。せめて警官志望とか自衛隊志望がいれば頼りにできるのだが。
僕は落胆した。
適合者はいない。
ひとりでやるか。
僕はシャワー栓を閉めた。
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