シスター蒲原

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 子供たちを自宅に招待してジュースやお菓子をいっしょに食したこともあったらしい。現代ではとても考えられない大らかな時代だったのだ。  野球童の霊たちは恨みなんかではなくて、じいちゃんを慕い、今もなお救いを求めているということか。それなら納得できる。 「エニワサクジがまた動きだしたのですね。ここしばらくは音沙汰がなかったので収束したかと思っていたのですが」  シスターの顔には恐怖がまざまざと浮かんでいた。  僕は訊ねた。 「あの、僕のばあちゃんも、西島君江もエニワサクジに殺されのでしょうか。去年の秋に肥溜に落ちて死んだ老婆のニュースを知っていますか」 「ええ。存じておりますわ。警察の話では事故になっていますけど、あれは、肥溜に潜む霊たちの仕業でしょう。あそこには隠し部屋があって、ブグイミの犠牲者たちが安置されていると聞いています。証拠はありませんけど。 ところで、及川毬夢さんが監禁されている場所・・・心当たりがあります」  一瞬、シスター蒲原の目の奥に鋭い光が宿った。  神に仕える人間とは程遠い、邪悪な生き物を憎悪する生々しい感情を垣間見た気がした。 「緑仙寺を知っていますか」  シスターの眸は穏やかな色彩に戻った。声は固い。  僕は知っていますと答えた。ばあちゃんの、西島君江の墓がある寺だ。  マリコがその場所で煙霧のように消えてしまったことはまだ記憶に新しかった。じいちゃんは<霊槽>の仕業だろうと言った。 「緑仙寺に監禁されているということですか」 「まさか。緑仙寺の裏山の竹やぶに祠があるそうです。その祠の地下に儀式用の小部屋があって・・・それ以上は私も存じません。異教徒のおぞましい儀式には眼を背けたいのです」 「ごもっともです。それにしてもお詳しいですね」  僕は緑仙寺周辺のロケーションを思い浮かべていた。コナラやクヌギに囲まれた高台に位置する古刹。じいちゃんといっしょに食った鰻屋のまわりにも竹林が雑木林があった。  ふと疑問が湧いたので質問してみた。
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