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ーーここでひるんではいけない。
「お前、結構、感傷的なタイプ?普通そこまで話盛らないだろ」
「いえいえ、俺は事実を言ったまでで。でも、それよりも映画見て泣いちゃった倉科さんには正直驚きました。俺が彼女だったら、倉科さんを抱きしめてあげたくなりましたよ。でもあの映画、そんなに泣けます?」
話を聞いて青ざめる倉科が思わず立ち上がって言い放つ。
「昔飼ってた愛犬を思い出したんだよ。それが悪いか!」
一瞬あっけにとられた原田だが、
「まあまあ、落ち着いてくださいよ」
そう言って、倉科の腕をとって座らせる。
「いつも隙をみせない倉科さんの、意外な一面を見せてもらって俺としては親近感を持ちました。かわいい一面をお持ちの倉科さんに免じて、この事は内緒にしておきますよ。そのかわり、昼食おごってくださいね」
どうしてあの時の様子を原田に見られるんだと運の悪さを呪わずにはいられない。
「このことは他言無用だからな」
でも、念のため、少しばかり釘を刺しておく。
「原田って、以前広報部の脇坂さんと付き合ってたことあるよな……」
それまで余裕綽々だった原田が青ざめる。
「なんでそれを……」
形勢逆転、してやったり。
「お互い他言無用ってことで」
倉科はニヤリと笑い、伝票をとってレジに向かった。
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