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お互いの思いを確かめ合った倉科と奈々子が一緒に朝食をとっていた時のこと、思いがけない話を奈々子から聞く。
「私たちが映画館に行った時、原田さんたちも来ていたんです。『倉科さんといつからつき合っているの?』って聞かれました」
「え??」
「その時はまだ付き合っていたわけじゃなかったからはっきり答えなかったんです。ただ、内緒にしてくれるようにお願いしました」
なんで原田がと思ったが、平静なふりをして言う。
「僕からも原田に話しておくよ」
奈々子が安心したような顔をした。
異動の準備に追われる中、引き継ぎのために原田に同行してもらい取引先に挨拶回りをすることになった。主な取引先を訪問し、二人で少し遅めの昼食をとろうと定食屋に入る。
日替わり定食を待つ間、水を飲んでいると原田が意味深な顔をして倉科を見る。
「倉科さんっていつから佐倉と付き合っているんですか?」
ーーやはり、そうきたか。
「想像に任せるよ」
「ふぅん」
ーーなんなんだ、その微妙な間は。
「俺、前から怪しいって思っていたんですよ」
ーーって何が?それにいきなりタメ口?
「いつだったかの宴会で、うちの課の女の子の話題になったとき、俺が佐倉のこと『可愛いなあ』って言ったら、『あんな純情な子にちょっかい出すなよ』って言ってましたよね? あれは、先輩として後輩を諫めたのかと思ったんですけど、倉科さんが狙ってたんですね……」
ーーなんでそんなこと覚えてるかなぁ。
「まあ、俺の場合、振り向きそうにない高嶺の花を振り向かせるのが好きなんで、そこは倉科さんとかぶらないからご安心を」
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