時計

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 彼女なりになにかを感じ取ったらしいが、吉昌は首を横に振った。 「大丈夫。ただ雑談してただけだから」  あくまでも、なんでもない顔をする。  普段あまり空気を読まないアサトも、いまだけは吉昌の気持ちを汲んだようになにもいわなかった。  あかりには、教えたくない。それが吉昌の心だ。  ポケットにしまった時計に、その上から触れた。秒針の刻む振動がかすかに伝わる。まるで、鼓動のようだと思った。
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