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だって、と、吉昌は肩越しに振り向いた。戸口にたたずむ二人は、やはり泣いていた。
つられて泣きたいような気持ちになりながら、それでも吉昌は笑った。
「本当の友達だから、止めないんだろ。本当の友達だから、行かせてくれるんだろ」
それも友情だ。そう思うから、笑える。
「ありがとう。おまえら、最高のダチだよ」
ぼろぼろと涙を零しながら、歯を食いしばるようにして長戸が、ドアを閉めた。
完全に閉じる寸前、アサトの涙声が滑り込んだ。
「六日前で待ってる! 待ってるからな!」
閉ざされたドアに、吉昌は答えた。
「必ず行くさ」
誰かを泣かせてしまうとわかっていて、選んだ道だった。
瀬川にはそれでも行くと啖呵を切ったけれども、実際に泣かれるとやはりつらい。
だけど、まだ五十嵐が目覚めないなら、あかりを、みんなを救えるのは自分しかいないのだ。
車椅子から立ち上がり、点滴のスタンドを杖に歩き出す。
白いベッドの上の壁には「西村あかり様」と書かれたプレートが貼られているが、そうでなければ誰なのかわからない。
そこにいるのは本当にあかりなのかも疑わしい、人の形をした包帯の塊だった。眠っているのか、ぴくりとも動かない。
彼女の身元は、爆発の際身に着けていた生徒手帳から判明したのだそうだ。ベッド横のサイドテーブルに、いまそれが置かれている。焦げた表紙を開いてみれば、制服を着た少女の写真が貼られていた。
そしてその向かいのページには、堅苦しい校則が記された上に、それを塗りつぶすようにして三枚のプリクラが貼られていた。
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