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畜生め。
洒落じゃなくて、むしゃくしゃした。
こういう時は、手っ取り早く酔ってしまおう。
冷蔵庫の一番下を開ける。
白い冷気の中の、緑色のずんぐりとした酒瓶。
霜に覆われ、掌に張り付きそうなそいつを取り出す。
冷凍庫でギンギンに冷やしておいた、ロンドンドライジンだ。
さらっとした透明な酒が氷点下になることでひんやり、とろりと風味が増す。
スクリューキャップを捻ると、柑橘とフレッシュハーブの香りが拡がる。
グラスビールにワンショット注ぎ込んだ。
ビールが刺激され、白く細かい気泡が優雅に立つ。
所謂、ミクスチャーカクテルの一つ、
『ドッグス・ノーズ』だ。
本当はジンにビールを注ぐらしいが、構わないだろう。
グラスに口を付け、一息に半分を飲み干した。
ビールの喉越しに、ドライジンの華やかな香りと苦味。
強いアルコールのもたらす、ひりりとした感触(キックと云うらしい)が心地良い。
美味いなあ。
無心に思った。
残りを飲み干し、2杯目を平らげた頃、俺はすっかり満ち足りた気持ちになった。
「酒は飲ーめ、のめってかー。はっはは」
そしてすっかり酔っていた。
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