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和のずいぶんな言い様にも怒ることはなく、聡は心から安心したかのように、ホッとため息を吐いた。
そしてやっと、自分のカップにも口を付ける。
「よかった・・・」
「ホントだよ!マジで美味しい!センセイ、どうやって作ったの⁉」
和はもう一口、さらに一口飲んだが――、やはり美味しかった。
お湯ではなく、ホットミルクがベースなのだろう。牛乳のコクと甘さとがある。
しかし、それだけではない。
牛乳や砂糖だけではなく、何かもっとこう複雑な、隠し味的なモノがあるように、和には思えた。
それが何であるかまでは、全然分からなかったが。
しかし聡は、実にアッサリと、種明かしをしてくれた。
「塩をほんの少しだけ、加えてみた。それと、バターの代わりにチョコレートを一欠けら落とした。――甘過ぎないか?」
「うん。ホントに美味しい・・・」
ココアの甘さはちょうどよかったが、湯気越しに自分へと問い掛けてくる聡の笑顔が、今にも蕩け出しそうなほどに甘く、和には見えた。
ココアを飲んでいるはずなのに、何だか喉が渇いてくる――。
和は思わず、カップの中へと視線を逃がした。
聡が自分のカップを両手で抱えながら、言った。
「ありがとう。和」
「え?」
お礼言うの、おれの方じゃね?と、マシュマロを追加投入し、溢れんばかりになったカップを片手に首を傾げる和に、聡は話し始める。
「美味しいココアを淹れるのには、それなりの材料や淹れ方がちゃんとあるんだな。改めて調べてみて分かったよ」
「・・・・・・」
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