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それどころか、明らかな快感を覚えて声を上げる聡に、和が笑いながら言う。
「センセイ、乳首、感じるんだ?」
「・・・・・・」
あからさまに口調を変えた和の問い掛けに、聡は答えない。
――答えられなかった。
この無言こそが聡の答えなのだと、和にはちゃんと分かっていた。
自分に問いながらなおも、薄い布地越しにもみ込むかのように乳首を弄る和に、聡は顔を背ける。
頬はもちろんのこと、耳までもが赤く染まっていた。
半ば開いている聡の薄めの唇からは、殺し切れない吐息が甘く零れ出す。
咲きかけの、名前の知らない花のようだと和は思った。
抜けるようではないが、聡はどちらかというと色白な方だった。
氷見という名字と、肌理の細やかさとが相俟って、見る者にそう思わせるのかも知れない。
和もまた、そうだった。
何時もは白いが、今は上気する聡の頬の滑らかさに引き寄せられるように、口付ける。
形がよい耳にも、かじるようにキスをした。
和は、聡のアンダーウェアの裾に両手を掛けた。
今度は、和が何も言わなくても、聡は両腕を上げた。
春は名のみの四月になったばかりで、しかも雨の今日は、聡は暖房をつけている。
それにもかかわらず、聡は和にアンダーウェアを脱がされた途端、寒いと感じた。
胸の突起の微かな粘膜が、硬くしこっているのが自分でも分かった。
しかしそうなったのは、けして寒いからではなく、布地越しに和に散ざん弄られたからだということも――。
和の目は視線は、剝き出しの聡の乳首に惹き付けられた。
その、小さな頂きが唇と同じ赤さだと気が付いた瞬間、反射的に口付けていた。
「あっ!」
とっさに上がる聡の声が、耳に甘い。
聞いていると耳から、蕩かされてしまいそうなほどに、甘い。
もっともっと焦らして、――イジワルをして聞いていたかったが、自分がいつ暴発するか分からない。
名残惜しげに、最後に尖らせた舌でひと突きしてから、和は聡の胸から顔を上げる。
そして、言った。
「センセイ――、ベッドでしようよ」
「あ、あぁ・・・・・・」
聡は自分の部屋にもかかわらず、今初めてベッドが有ることに気が付いたように、和の肩の向こうを見た――。
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