消えることがない、秘密の青いアザ

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 和の両手が、聡の両肩を(つか)む。 ほとんど突き飛ばす勢いで、その体を退()けた。  その時の、聡の口が外れた衝撃で和の留め金が吹っ飛んだ。 量はけして多くはなかったが、聡の顔のあちらこちらに半透明な飛沫が散った。 「――っっ!セ、センセイっ!?ゴメン」  和は上体を起こし、さっきの聡とおなじように、ティッシュペーパーをゴッソリとまとめて掴んだ。 そして、自分の脚の間に座る聡の顔を抱え込んだ。 「ダイジョブ⁉目、入らなかった?」 「うん・・・大丈夫」  そう、答えた聡の固く閉じた目の、まつ毛の濃さに和は息を飲む。 そのすぐ近く、まぶたや目尻に飛沫はこびり着いている。 ――コレって、まんま顔射じゃん。  そう思った和と、恐るおそる目を開けた聡とが、見つめ合った。  「――嫌じゃなかったか?」 「は?」  聡が口を顔を、手の甲でグイッと拭い、さらに告げる。 「その・・・無理矢理にしたみたいだったから。よくなかったかな?と思って――」 「・・・・・・」  和は掴んでいたティッシュペーパーの束を、聡の顔へと押し付けた。 「よくなかったわけ、ないじゃん!」 「え?」 「――よくなかったら、こんなことにならないだろっ!」 「こ、こんなことって・・・・・・」  言い淀む聡にはおそらく、全く分かっていないのだろう。 和はティッシュペーパーで、聡の顔をグリグリと拭いながら言った。 「顔射だよ!顔射‼センセイ、ホントに分かってんの⁉」 「が、顔射・・・・・・」  さすがに、露骨に連呼されて絶句する聡に、和もまた何も言えなかった。 元はと言えば、自分が堪え切れなかったせいなのは、十二分に分かっていた。 ――でも、それをセンセイの、聡のせいにしていた。
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