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水晶堂復活
青く晴れ上がった空が広がる中を、四月一日始は店の外に出て息を吐いた。
「あー。東京も終わりと思ってヒヤヒヤしたが、直ってよかったな。なあ星無、あのおっさんは大丈夫か?」
水晶堂のスターレスという名の魔女、星無月子は、四月一日の隣に立って言った。
「多分大丈夫だと思うわ。今はいないけど、必ず戻ってくる」
「何でそう思う?」
星無は、はっきりした声で言った。
「彼は飲んでしまったもの。魔法使いしか飲むことの出来ない魔法薬を。しかも中身がフォーマルハウトの肺翼だという指摘までしてきた。やっぱり普通じゃないのよ降魔君は。本来死んで終わってしまうはずの運命は、少し、いや、大きくズレはじめた。少なくともこれだけは言える。彼は決して敗北しない。現に、その兆候は見え始めている。揃うべき者が集まりはじめている。彼がそれに合流した時、事態は本当の意味で終結を迎える」
「お前なら終わらせられるんじゃないのか?」
星無は首を振った。
「これは私の領分じゃない。下手に近づくと私も消されてしまう。現れようとしている存在は、私すら及ばない絶対的な存在だから。終わりのない、終わらせることすら出来ない存在」
星無はそれ以上何も言わなくなった。
四月一日は、静まり返った沈黙に耐えかねて、思わず空を見上げた。
変わらぬ平和な春の空が広がっていた。
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