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冥界軽便鉄道
冥界軽便鉄道の黒く古ぼけた車体が、ガタガタと振動していた。
冥界の原野や森を切り裂いて、鉄道はどこに向かうのか、知っている者は細だけだった。
「冥界は実に広大だ。私は死んだ後冥界を長い間旅してきたのだが。地獄ではとんでもない斬獲を繰り広げたな。おかげでもう地獄に私の呼んだ悪魔はいない」
孫の降魔は、細に応えず車窓の向こうを見つめていた。
勘解由小路の横の座席には、バジリコックが寄り添うように座っていた。
「もういいだろう。袋田さん。こいつの眼鏡を。鬱陶しい邪眼除けだ。もう出来ているのか?」
袋田さん、かつてはベルフェゴールと呼ばれていた悪魔は、恭しく眼鏡を差し出した。
「こちらでよろしいでしょうか?降魔様」
バジリコックが勘解由小路を見つめた。
何とも形容し難い表情を浮かべた。
「真琴だったらとってもエロくて最高なんだがな。語尾にザマスをつけて喋れよ」
要するにそういう眼鏡だった。
「それで、降魔。この後どうする?お前の旅のゴールはどこだ?」
「分断された俺はあと2人いる。それ等を得た後、真に欲しいものを手に入れる。帰るのはその後だ」
「どこまでもついて行くザマス」
「お前ちょっと黙っとけ蛇」
車両は、ガタガタと揺れながら目的地に進んでいった。
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