勘解由小路家と発見した物

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勘解由小路家と発見した物

勘解由小路邸の涼白さんの部屋は、幸せな暖かさに満ちていた。 「あああーあ。幸せだ。苦節42年。芸術の世界に入って20年。色んなこともあったけど、ついに!ついに俺が!こんなに可愛い娘と!あー、ポワポワの真っ白な髪の毛。おおおお!安静にしてなきゃ駄目だぞ氷花。お腹に赤ちゃんがいるんだから。そういえば、結婚の挨拶誰にすればいいんだろう?氷花の親って敵だったろう?本当に敵なのか?」 涼白さんは可愛らしく寝たまま頷いた。 「うん。私を産んだお母さんは今禍女の皇と一緒にいるよ。文化祭の時ヤコちゃんに殺されそうになっちゃったのー。正男♡怖いだす♡ぎゅーってしてー」 涼白さんが甘えた声を出し、正男は興奮していた。 あと訛った訳ではなかった。噛んだだけだった。 「あああああああ!本当何この可愛さ!スッケスケの白いスリップとかどこで仕入れたんだ?!先っちょのピンク色が透けて見えて!うおおおおおお!」 やおら襲いかかったエロ中年を躱して、涼白さんは帰ってきた人物の元に駆け出して行った。 「いやああああああああん!お帰りなさいませ!大大大大大好きな小ちゃい可愛い莉里様!莉里様の匂いは車を降りた瞬間解りました!ご無事で何よりだす!元気ですか骨は折れていませんか風邪は引いてませんか?!」 「うん。ただいまなのよさ。ふつふつと感じていた嫌な予感が現実の元になったのよさ。うん、あのね、そのね。ーー父親は誰なのよさあああああああああああああ!ああめでたいのよさ!小ちゃい赤ちゃん抱きたいのよさ!こんなエロい下着どこで仕入れたのよさ?!おっぱいほぼ丸見えで影山さん鼻血出して姉ちゃんと逃げてったのよさ」 「前に奥様と二人っきりで男性のことを教えていただいた時、余っていた下着をプレゼントしてくださいました。奥様は黒専門ですから。うう。おえ」 「おい氷花。またつわりか?だから安静にしとけと。俺達の子供に何かあったらどうするんだ?ああおかえり、莉里」 「おっさん違いなのよさ!莉里が欲していたのは!あああああでもいいのよさ涼白さんが幸せなら!銀氷花になるのよさ?!だったら娘は銀正子になるのよさ!今からメイド教育楽しみなのよさ!」 「おい。俺の子の性別もう判明かよ。まあとりあえず奥で一息吐けよ。間借りしてる身の上だが、ガキの頃遊び回った家だし、どこに何があるかは大体解るぞ。氷花、莉里を洗ってやってくれ。風呂に入るといい。何かデカイウォーターベッドだの椅子だのがあるがいいんだよな?凄い豪華なマットプレイしてるのは目を瞑った。見なかったことにした」 正男は触れてはいけない部分から目を逸らしていたのだった。 風呂から出た莉里が、居間に入ると全員がそこにいた。 「あれ?金髪と目つきの悪いのは?」 「あの二人はだな。あああれだクリ子と一緒に消えた。今いるのはガイアだけだ」 「ああああ。パパの元カノなのよさ?ああ、確か異世界に行ってたのよさ?神様になったなんて凄いのよさ。あれ?今の旦那さんはどこ行ったのよさ?死々戸と飯島と帰ってきてたはずなのよさ」 「そうか。もう見えているんだな。完全に覚醒してるんだな。しかし、知ってるのは自分だけだと自覚しないと周囲は混乱するだけだぞ?」 「そういう未来が見えただけ良かったわ。この子の見た未来が本当に起こるなら、私達はだらけていていいってことになるわね」 「そうは思うけど、莉里達が頑張らないと今年のクリスマスや正月にプレゼントもお年玉も貰えなくなるのよさ。頑張ってあれをパパの元に届けるのよさ。そうすればママも帰ってくるのよさ。この前ぺろぺろされた時、パパの一部は莉里の中にあるのよさ。あの鉢の小ちゃい木にパパの魂の一部を注ぐのよさ。そうすれば完全復活したパパがママを復活させるのよさ。邪魔しにきた禍女の皇もイチコロなのよさ」 「ちょっとだけ黙っとけ莉里。お前が喋れば喋るほど。ああこの恐怖のネタバレ幼児が。整理しよう。うちにパパが管理してる鉢があるはずだ。莉里はそれをパパに届ける訳だ。莉里はパパにおっぱいを舐め回されて怯えて泣いていたが、しかし無意味ではなかった。確かに吐き気のする最低のパパの振る舞いではあるが、かえってパパは礼を言いたくなるだろう。私のこの生意気で可愛い妹は、ママにとてもよく似ている。パパを病的に愛するところがな。ママは本質的に奪精鬼だ。勿論莉里はそれ以上の強力な奪精鬼で、パパと肌を合わせた時大量のパパの霊気を奪い取った。それを注ぐべき何かがうちにあるはずだ。パパとママを繋ぐ唯一の繋がり探すぞ。どこにあるんだそれは?莉里」 「解んないのよさ。未来を見通す莉里は自動的なのよさ。口笛吹いてみるのよさ。ああ!鳴らないのよさ!莉里はニュルンベルクのマイスタージンガー吹けないのよさ!ニュルンベルクっていうとどうしても脱糞音みたいな都市名しか思いつかないのよさ!ブリスベンしか思いつかないのよさ!」 口笛が吹けないのはまだ小さいからだった。 「何が脱糞音だ。黙っとけ莉里。正男、いや鬼哭、あんたは子供の頃からパパとこの家にいたんだったな。私はまだここに引っ越して一年経っていない。どちらかといえばあんたが頼りだ。何か覚えていないか?」 言われて正男は腕を組んで首を捻った。 「そう言われてもなあ。あいつはあんまり物に執着しない奴だった。ガキの頃から今も持っている物はジャズのレコードとCDくらいだ。鉢に入ったものといえば何だ?サボテンか観葉植物か?そんなの持ってた記憶はない。あいつの部屋は、今氷花が氷で閉ざしちまってんだよな。あいつの寝室には入れないのか?氷花?」 「私が死なない限り溶けないようになってる。遺体の保存状態を考えると、そんなに長い間開けられないわ。莉里様、1分くらいなら入口を開けられます」 「じゃあ入ってみるのよさ」
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