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初めてのお使い
居間では、トキとガイアが視線を戦わせていた。
しばらくの沈黙を超えて、トキは静かに言った。
「お元気そうで何よりでございます。西京杏様」
「今はガイアよ。異世界アースツーの神をしているわ。貴女にまで会うことになるなんてね。貴女に脅されて家を追い出されたんだったわね」
「記憶に食い違いがあるように存じますが。思えばこの家の庭に全ての妖魅式神を集結させたかと。我等の威に怯えた風でもなく、肩をすくめてお帰りになられたと。逆にあの状況で太々しい態度は、今思い返しても大した胆力と存じます」
まさに百鬼夜行を脅しに使ったトキもトキだが、平然としていたらしいガイアもガイアだった。
トキと真琴の恐ろしい諍いの前に、人知れず、妖しい頂上決戦は既に起きていたのだった。
「出て行けと言われたら出ていくしかないじゃない。まあ、そこで踏みとどまっていれば違ったのかもしれないけれど、どちらにせよもう終わった話よ。トキさん、私はいいから降魔を助ける方策を考えなさいな」
「母親と元カノの争いなんかどうでもいい。莉里、見せてみろ」
「これなのよさ。何か変なのよさ。ろくに世話もしてないのに虫もついてないのよさ。これは何の木なのよさ?気になるのよさ。何とも不思議な木なのよさ」
「パパが子供の頃から持っていたものだ。パパの霊気が息づいている。これはーー?ああ?おいトキ。マジか?この木は」
「これは覚えておりますよ。坊っちゃまは2歳の頃、私が勘解由小路家に女中として迎えられた時に、既にお持ちでいらっしゃいました。そうですか。これが」
「それを降魔に届けるなら、ヘルを呼びましょうか?」
「その必要はございません。坊っちゃまが冥界にいらっしゃるのなら、参りましょう莉里様」
「どうやって行くのよさ?トキ?」
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