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プロポーズ
今日は日曜日で、大翔の誘いでドライブに行くことになっていた。
ドライブの目的地は富士方面だった。河口湖の湖畔で昼食をして、その後遊園地のアトラクションを楽しむコース。これは私達のドライブデートでは定番コースの一つだった。
朝、大翔が私の自宅まで迎えに来てくれる。
「それじゃ、お母さん。行って来ます!」
玄関先で見送ってくれた母に声を掛ける。
母が大翔に頭を下げた。
「大翔さん、澪を宜しくお願いしますね」
大翔が笑顔で頷いた。
「はい、お任せ下さい。それでは行って来ます」
私達は大翔の車に乗り込み自宅を後にした。
車は横浜町田インターから東名高速道路に入り、足柄サービスエリアで休憩すると御殿場インターで降りた。そして国道138号線から東富士五湖道路に入り、富士吉田インターで降りる。
そして河口湖北側に在る湖畔のレストランに到着したのは十一時過ぎだった。私達は少し早いけど、そこで昼食をすることにした。
このレストランは二階のテラスに席が在り、河口湖と富士山を眺めながら昼食を取る事が出来た。
私達の目の前に素晴らしい景色が広がっている。
「それじゃ、このレイクスペシャスコースで」
大翔はこのカフェで一番高いコース料理を頼んだ。私は「えっ?」と思った。
「大翔! そのコース高いんでしょ。私、普通のコースでいいわ」
「ダメ。今日はこれを二人で食べよう。二人の記念日だから……」
「記念日って……? 何の?」
私がそう言うと彼が自分の鞄から小さな四角いケースを取り出した。
「それって……?」
その中に入っている“モノ”は私でも簡単に想像出来る。
大翔はそのケースの蓋をゆっくり開けた。
そこには私の予想通り指輪が輝いている。
私は突然の出来事に声も出ず両手で口を押さえていた。
「澪。僕と結婚してくれ。きっと君を幸せにする! 絶対だ!」
「えっ……? ここで……?」
私はそう言うのが精一杯だった。心臓が鼓動を高めているのが分かる。目に涙が滲んでくる。
「澪、どうかな?」
私の心臓は、とても”嬉しい“と感じている。そう、私は一番愛しているこの人と一緒になるべきだ……。
「……はい……大翔。嬉しい……。ありがとう……」
私は俯きながら、そう答えた。
私が顔を上げると大翔が満面の笑みで頷いていた。
そう私はこの笑顔に恋したんだ。
私はそこに居る未来の夫の顔を見つめ、人生最大の幸福を噛み締めていた。
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